レースレポート
2012 鈴鹿8時間耐久ロードレース
- ■開催日
- 2012年7月26日(木)〜29日(日)
- ■開催サーキット
- 鈴鹿サーキット
- ■天候
- 晴れ-路面状況:ドライ
- ■出場クラス
- ---
- ■ライダー
- 清成龍一・青山博一・高橋 巧
- ■予選結果
- 2位
- ■決勝結果
- 41位
レース結果
1年に1回行われる国内二輪最大規模のレース、鈴鹿8時間耐久レース。
二人、あるいは三人のライダーで交代しながら8時間後のゴールをめざすこのレースは耐久と言いながら、
実際にはタイヤ交換、ガソリン給油、ライダー交代を1時間ごとに行ってリフレッシュ。
これを8回繰り返すため、1時間ごとのスプリントレースが8回展開される非常に過酷なレースとなっている。
一昨年はこの難しいレースで勝利を飾り、昨年は3位表彰台を獲得したMuSASHi RT ハルク・プロは、
今年のレースに一昨年の優勝メンバーである清成龍一に、
ハルク・プロで全日本GP250チャンピオンを獲得しその後世界へ羽ばたき、
GP250世界チャンピオンに輝いたハルク・プロ卒業生の青山博一、
さらに全日本JSB1000をチームから戦う高橋巧の三人のライダー編成で戦うこととなった。
8時間にわたってレースをハイペースで周回するためには十二分なマシンのセッティングが必要で、
そのために7月上旬から2回にわたり、合計1週間近くのテストが行われた。
しかし2回のテストともに気温は涼しく、しかもいずれのテスト日にも一日は雨にたたられてしまい
涼しいコンディションでのマシンセッティングを行うことはできたが、真夏日に対しての準備はできなかった。
レースウイーク初日の木曜から気温は35度を超え、路面温度も60度という前例がないような過酷なコンディションになってしまった。
事前テストで行ってきたマシンに対しての準備をもう一度基本から始めなければならなかったため、
チームは一つ一つのセッションを使ってマシンを仕上げていく。
それでも60度というこれまでに経験したことのない路面コンディションへの対応は難しく、思うようにタイムを上げることができない。
チームにとって最も頭が痛いのは、マシン作りをメインで行ってきている高橋巧のペースが上がらないこと。
4月に行われた全日本第2戦鈴鹿2&4では2分7秒前半のタイムを記録していた高橋だったが、
このウイークは9秒にもなかなか入らない。予選時間をフルに使ってセットアップを進め、
なんとか9秒台に入ることはできたが、それでも7秒は見えなかった。
チームにとって停滞ムードが漂っていたが、
これを一気にクリアにしたのが土曜午後に行われたトップ10トライアルだった。
計時予選で上位10位に入ったチームのライダー二人が一人ずつ、
1周だけのタイムアタックをするこのトップ10トライアルに、MuSASHi RT ハルク・プロからは
清成龍一、高橋巧が参加。2分9秒台というスローペースで進んでいたトップ10トライアルの会場全体に、
やはり高い路面コンディションではタイムを出すのは難しいかというムードが漂い始めていた中、
高橋はその空気を一変させる2分7秒624をマーク。これに刺激されて他のライダーも大幅にタイムアップし、
チームメイトの清成も2分7秒063を記録。残念ながらポールポジションはコンマ2秒差でライバルに奪われたが、
2位の位置からスタートすることとなった。
決勝がスタート。スタートライダーを任された清成は序盤から積極的にコースを攻め、
2周目にこのレースのファステストラップとなる2分7秒943と、
唯一の7秒台をマークしてトップに出る。
ライバルの転倒もあり、清成はこのスティントをトップでクリア。
2位に4秒6の差をつけて青山にバトンを渡した。8耐はライダー登録されたことはあるものの、
自身が走る形では初めての耐久レースとなる青山は灼熱の中、
周遅れを交わしながらラップを刻む難しい自分のスティントを2分10秒台でラップ。
2位のチームが9秒から時折8秒台へ入れるためその差は徐々につまり、32周目に抜かれてしまうが、
それでもペースを崩すことなくトップに食らいつき、2位のまま高橋にバトンを渡す。
期待された高橋だがまたしても予選同様、タイムが今一つ上がらない。
その差をここで24秒まで広げられてしまった。
しかしトップを走るチームのマシンにガス欠が起こり、
さらにここで清成が登場し、またしても8秒台でラップ。
トップに出たばかりか、2位に19秒の差を付けてこのスティントを終える。
清成からマシンを預かった青山はまたしてもステディな走りを披露。
途中、逆転されて2位になるがそれでも差を大きく広げられることなく、このスティントを走り切った。
チームとしてはここでライバルに対して差を付けたい。そこで清成を起用し、勝負に出た。
しかしピットアウトして1周目のデグナー入り口で大きくマシンをスライド。
立て直そうとコントロールしたがハイサイドを起こしてしまい、
ハイスピードでマシンは転倒。直後にガソリンタンクが路面に削られ、
穴が開いたことから火が着きマシンは炎上してしまう。
清成もマシンに絡む瞬間があったことから火傷を負ってしまった。
オフィシャルに助けられ清成は再び走るために、火傷を負った身体ながらマシンを押してピットまで戻ってきた。
転倒したのが16時33分、チームが総力を挙げてマシンを修復し、コースに戻ったのはそれから約2時間後の18時24分だった。
マシントラブルが発生して二次災害を起こしたりしないよう、
チームは最後のライダーを務める高橋にコースをゆっくり1周してマシン確認をし、再度ピットインすることを指示。
高橋はこれを守り、ゆっくりコースを1周してマシンに問題がないことを確認するとピットに戻り、
メカニックが最終的なチェックを行ってコースへ戻っていった。
残り1時間。ヘッドライトを点けゴール目指して走る高橋。
走れる限りは全力を尽くす。チームの思いが込められたマシンを全力で走らせ19時32分19秒、165周してチェッカーとなった。
チームメンバーのコメント
本田重樹監督
レースウイークは事前テストとは一転して非常に暑いコンディションとなってしまい、 その対応に終始追われることになってしまいました。 タイムを大きく上げられずに非常に苦労させられましたがそんな状況の中でもライダーが頑張ってくれて、 何とかトップ10トライアルでは2位に付け、決勝もトップ争いをするレベルにまで仕上げられました。 勝負所で清成を投入し、流れを一気に引き寄せたなかったのですが、アクシデントがあり、 転倒という結果に終わったのは非常に残念です。 ですが清成も大きなけがもなく、たくさんのデータも取れましたし、 また何よりもチームサイドとしても、炎上してしまった状態のマシンを限られた時間の中でしっかり修復。 再びコースへマシンを送り出すことができたのはいい経験になりましたし、 チームスタッフの気持ちを引き締めるいいチャンスにもなりました。 たくさんのファン、スポンサーの皆さんに応援いただき、 最高の結果を出して喜んでいただきたかったので申し訳ない気持ちでいっぱいですが、 また来年もチャレンジし、喜んでいただける結果を披露したいと思います。 たくさんの応援、本当にありがとうございました。
清成龍一選手
順調に予選から進んで行って、レースも全く問題ない状態で臨むことができました。 とにかく有利な位置でレースを進めたいと考えていたのですが、 トップ争いをしているチームに対して差を大きく広げられなかったのでなんとか プッシュしようとそれだけを考えていました。転倒したときは、トップとの差を詰めるのは アウトラップが非常に大事なので、そこから攻めて差を一気に詰め、 早いタイミングでトップに出て引き離そうとしていました。 ペースが早すぎたようで、スプーン一つ目の進入でマシンが大きくスライドをし、 何とか立て直そうとしたのですが戻らなかったです。 完全に自分のミスです。バイクが燃えてて、オフィシャルの方がメディカルに行くなら リタイヤ届を出さないとダメと言ったので、まずはマシンをピットに戻すことだけ考えました。 自分の判断でリタイヤは絶対にありえなかったし、ピットまでバイクを戻し、 マシンをチェックしてもらってそれでチームのみんなと走れないと判断してのリタイヤなら 受け入れることができると考えたからです。 このレースはたぶん、一生悔しい思い出として記憶に残ると思います。 本当に悔しい。リベンジは絶対にやります。 来年もチャンスを頂けるなら、ぜひこのチームでリベンジしたいです。
青山博一選手
自分自身が全日本で活動しているときにこのハルク・プロに所属していて、 そこで全日本チャンピオンを獲らせてもらって世界へ送り出してもらったという恩をとても感じているので、 今回はその恩返しができればと考えていました。 ですから変なレースをしてチームの足を引っ張りなかったですし、 すごくプレッシャーがありました。とはいっても自分にとって耐久レースを走るのは初めての経験で、 いつもはスプリントレースを走っているので、40分、50分走って終わり、 というレースしか走ったことがありませんから、メンタル面の維持とか非常に難しかったです。 ライダーとしてはもっと速いタイムでレースを引っ張るようなことができればよかったですが、 自分のエゴでチームに迷惑をかけるようなことは絶対にできなかったですし、 とにかく受けた順位を落とさないよう、万が一落としても大きく差をつけられないよう、 それだけを考えて走りました。久しぶりにこのチームで走って、 本当にこのチームのレベルの高さを痛感しました。 このチームなら、世界へ出て行っても十分にトップレベルのレースができます。 もしまたチャンスが頂けるならぜひチャレンジしたいですし、 今度は今回の経験を活かして、もっとレベルの高い走りが披露できると思います。 この経験を後半戦のワールドスーパーバイクにも生かしたいと思います。
高橋 巧選手
マシンのセッティングは4月の鈴鹿2&4のものがベースだったのですが、 テストからずっとフィーリングがよくなくて、それはレースウイークに入っても同じでした。 マシンが2台あって1台はレース用に温存していてTカーを仕上げていたのですが、 どうしても思うように走れず、三人とも決勝用マシンのフィーリングがいいという見解だったので、 トップ10トライアルではレース用マシンを使いました。 やはりマシンのフィーリングがよく、7秒台真中が出ましたが、 4月のレースでは7秒前半が出ていたので、もう少し出てもいいはずです。 決勝での自分のスティントではタイヤが路面コンディションにうまく合わず、 タイムを上げられずにここでも苦労させられました。 転倒で順位を落としてしまいましたが、あのアクシデントは自分にも起きたかもしれないし、 清成さんも大きな怪我をせずによかったです。 最後はもう、バイクもしっかり直してもらったし、ゴール目指して走りました。来年こそはぜひ優勝したいです。

2012鈴鹿8耐がスタート

清成龍一選手

青山博一選手

清成選手がまさかの転倒

マシンを押しピットに向かう清成選手

レースに復帰
ゴールを目指す高橋選手