MUSASHI RT HARC-PRO

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レースレポート

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全日本ロードレース選手権 第3戦 in 筑波

開催日
2012年5月12日(土)〜13日(日)
開催サーキット
筑波サーキット
天候
決勝 晴れ-路面状況:ドライ
出場クラス
JSB1000/J-GP2/ST600/J-GP3
ライダー
高橋巧/小林龍太/浦本修充/徳留真紀
予選結果
高橋巧:2位/小林龍太:8位/浦本修充:3位/徳留真紀:13位
決勝結果
高橋巧:7位/小林龍太:7位/浦本修充:14位/徳留真紀:5位

レース結果

 全クラスが開催される第3戦筑波大会。昨年は東日本大震災の影響で筑波サーキットではレースが行われなかったため、2年ぶりの開催となる。  筑波サーキットは全長2.070mと全日本開催サーキットの中でもっとも短い。コースレイアウトはほとんどのコーナーが180度にターンしており、クルっと回った後に加速を左右に続くコーナーの連続の中でこなしていくという、ライダーにとって非常に忙しく、体力も消耗するハードなサーキットだ。そのコースを決勝ではJSB1000クラスが30周、その他のクラスは25周する。  今回の大会にMuSASHi RT ハルク・プロはJSB1000クラスに高橋巧、J-GP2クラスに浦本修充、ST600クラスに小林龍太、J-GP3クラスに徳留真紀とレギュラーライダー全員が参戦した。

JSB1000

前回のレースでやっと今季初優勝を遂げた高橋巧。事前テストからその好調さを維持したかったが、マシンのセッティングに手間取り、一発のタイムを出すことはできるのだが、連続してハイアベレージの維持がなかなか難しい状態のまま、事前テストは終了となった。
 それでも予選は2番手、決勝日朝のウォーミングアップランではトップタイムをマーク。 期待が高まる中で決勝のスタートとなった。ホールショットは他のライダーに譲ったが、絶妙な1コーナーへの飛び込みでトップに立ってここをクリア。そのままオープニングラップを高橋は制した。しかし、ポールポジションを獲得した中須賀克行選手が高橋の背後にピタリと付ける。56秒前半のハイペースでラップできるのは高橋と中須賀選手のみのため、周を重ねるごとに後続との差は離れていき、二人のマッチレースとなっていく。10周目の1コーナーでインに飛び込んだ中須賀選手が高橋の前に出るが、高橋もその後ろにピタリと付け、再びトップに出るチャンスをうかがう。ペースは相変わらず56秒台前半とハイペース。
 まさにテールtoノーズ状態でラップを重ねる2台。その差コンマ2秒とワンチャンスで前に出ることのできる位置を走行していた高橋だったが、第2ヘアピンで痛恨の転倒。すぐにマシンを起こして走り出したが、ポジションは5番手まで落としてしまった。 ペースを上げて少しでも順位を上げたいところだったが、転倒の際に右親指を脱臼。ブレーキングの操作が思うようにできず、タイムを上げられない。それでも59秒台で走り続け、満身創痍の状態で7位フィニッシュとなった。

ST600

 改造範囲の狭いこのクラスにおいて、市販の溝付きタイヤの性能がラップタイム、レース結果に及ぼす影響は非常に大きい。ルールからタイヤは1年に1度しか登録できないため、頻繁なモデルチェンジは行えない。ここ2シーズンほど、この部分で厳しい戦いを強いられているチームだが、それでもさまざまなアプローチをしながらこれを挽回しようとトライしてきている。
 前回のレースも終盤はタイムを落として転倒してしまった小林龍太だが、序盤はトップグループを走る好走を見せており、状態が上向きであるのは間違いない。レースウイークの走行時間をマシンのセットアップにすべて使い、さらに高いレベルへのチャレンジをライダー、チームは続けていた。
 予選はトップから0.6秒差で8番手となった。前回のようにスタートダッシュを決めればトップグループに付いていける位置だ。小林はスタートに集中。狙いすましたダッシュがピタリとハマり、1コーナーに3番手で飛び込むことに成功し、そのままオープニングラップを3位でクリアする。序盤のトップグループのペースは58秒前半。小林にとって厳しいペースではなく、このトップグループの中で序盤を走行していたが、10周目あたりからマシンの状態が厳しくなり、順位も落ちていく。結局、25周のレースフィニッシュ時には7位となっていた。

J-GP2

 開幕戦は接戦を制して優勝。クラスをスイッチして全日本初勝利を挙げた浦本修充。事前テストから好調で、安定した速さを見せていた。予選は57秒716のコースレコードを記録してフロントロー3番手となった。
 決勝日朝のウォームアップランを2番手で終え、いよいよスタートとなった。スタートで大きく出遅れ、1周目を7番手でクリアした浦本。この時点でトップとの差が2秒0に離れてしまった。それでも2周目5位、3周目4位と着実に順位を上げていくが、トップとの差は2秒3、2秒6と少しずつ離されている。それでも4周目終わりにはコンマ2秒ほど詰め、その差2秒4となったが、ここで痛恨の転倒。しかし再スタートを切り、14位でチェッカー。貴重な7ポイント獲得を果たした。

J-GP3

 開幕戦は3位表彰台を獲得。まったく新しいNSF250Rというマシンの開発をしながらレースを戦うチームは、手探りの状態でライディングの方向性、マシンのセッティングを行っている。レースフィールドでテストし、結果を残したパーツを一般ユーザーに供給するというレースパーツサプライヤーでもあるハルク・プロにとって、少しでも速くNSF250Rのマシンを仕上げたいところだが、チームは全日本開催の4クラスすべてに参戦しており、一つのクラスだけに力を注ぐことはなかなか難しい。それでも開幕戦から今回の第3戦の間にNSF250Rのエンジン開発はチームとして大きなテーマに掲げてトライ。ハルク・プロのエンジンベンチでは何度も開発エンジンが載せられ、開発のスピードは加速されていた。
 予選は1分0秒983で13番手。事前テストでの走り出しが1分1秒を切ったところだったので、走り出しから大きくタイムを上げることができなかったことになる。決勝朝のウォームアップ走行で大きくマシンのセッティングを変更。良いところをさらに伸ばすセッティングに変えるというギャンブルに出て、決勝を迎えることになった。
 まずまずのスタートを切り、オープニングラップは14位。3周目13位、4周目12位、7周目11位と順位を上げていく。さらにペースを上げる徳留。順位も必然的に上がり、10周目に10位、13周目9位、18周目には7位となる。ここで3位グループに加わることができたのだが、ギャンブルで変更したマシンセッティングでは、前者を抜くポイントである裏ストレートのスピードを稼ぐための第2ヘアピンでの加速が得られにくい。なんとかこのグループの前でフィニッシュしようとトライしたが、前に出ることができず、5位でチェッカーとなった。

チームメンバーのコメント

本田重樹監督

 J-GP3徳留真紀はテストからなかなかいいセッティングが見つからず、このレースウイークの中でどれだけレベルを上げられるのかという点に主眼をおいてチームとしてチャレンジしました。最終的に自分たちの使うパッケージングの中でどうしてもセッティングし切れない部分が見つかり、決勝前にそれを大きく変更する仕様にしてレースを迎えました。使っていなかったパッケージングなのでライダーがどこまで使いきれるか不安ではありましたが、ベテランライダーでたくさんの経験をしてきているので彼のその部分に託しました。我々の期待に応えてくれて、序盤から驚くほどのペースの良さで結果的に5位というリザルトを得ることができたのは今後につながるものです。さらに新たなパッケージングを詰めていき、上を目指せるように仕上げていきたいと思います。ST600クラスの小林龍太はなかなか持ちタイムを上げられず、長きに渡って我々が抱えている問題が解決できず、苦戦を強いられています。その中で龍太に対しては、普通に走っていても何のアピールにもならない。これはレースで、自分をアピールする場なのだから、自分の走りをしっかりアピールできるようトライしようとアドバイスしました。それを受けて龍太は実践し、序盤からいけるところまで行くというスタイルを貫きました。結果的に順位は落としましたが、我々が現状持っているパッケージングの中であのあたりが限界かな、と思います。この後、オートポリスのレースが控えていますが、少しでもさらに上にいけるよういろいろとチームとしてもトライを続け、龍太の走りをバックアップしていきます。J-GP2クラスの浦本修充はまったく我々が予想していなかった結果になってしまい、非常に残念です。第1戦で優勝し、今回のレースも勝って当たり前、という慢心が彼の心の中にもしあったとしたら、この転倒はいい薬になったのではないでしょうか。我々スタッフも彼は未だ経験の浅い若手ライダーであることを再認識し、最終的にタイトル獲得が果たせるよう支えていきます。JSB1000クラスの高橋巧は残念な転倒という結果になりました。ケガをしてしまったのですが幸いなことにここで少しインターバルがあるのでまずはそれをしっかりと治し、鈴鹿8耐、後半戦に向けて準備したいと思います。今回もたくさんの応援、ありがとうございました。

堀尾勇治チーフメカニック

 JSB1000クラスの高橋巧は決勝朝のウォームアップ走行でトップタイムをマークし、ここまでは順調でした。ですが結果的には、朝の気温と路面温度に対して午後2時35分にスタートする決勝時のコンディション変化の対応幅というものがライダー、チームともにしっかり見極めることができなかったために転倒、というものを招いてしまったのではないかと反省しています。そのあたりの緻密な計算と、それによるセッティング幅をどれくらいもたせることができるか、今後はそのあたりもチームとして見ていきたいと思いますし、ライダーにもその判断はしっかりとしてもらいたい点です。J-GP2クラスの浦本修充は、周囲のタイムというものに本人が惑わされてしまった、この1点に尽きます。落ち着いて自分のレースをすれば自ずと結果は付いてくる状態になっていたはずなのですがスタートで出遅れ、その中でトップが逃げるのを後ろで見て焦って自分を見失ってしまっていました。自分の走りをあの状況の中ですれば、57秒コンスタントに走る準備はしっかりできていたのですから、レース中盤には間違いなくトップに追い付くことができていたはずです。結果的に自滅して回りを楽にさせてしまいました。自分のコントロールもライダーとして大事な仕事ですから、これを糧に今後は同じことがないよう心してかかってほしいと思います。ST600の小林龍太は確かにハード面で厳しい状況にあるのは間違いなく、そうした厳しい時間が長いためにライダーとして自分の引き出しの中にあるものを通常であればいろいろ出して試してみたりするものですが、なまじその時間が長いためにどれをどう組み合わせていいのか考えにくい状況になってしまっています。今までにもこうした時間というのはタイミングとして起きることもありましたが、マシンがフルモデルチェンジされたりして状況が一気に打開されたりしてきたのですが今はそれもなく、なかなかライダー側として厳しいのはよく分かります。ですがそれでもレースは戦わなければならないわけで、おかれている状況の中でベストを尽くすためには何をすべきなのか、それをしっかりと考えなければなりません。目の前のレースで考えるのならば、レース周回数全体をどう捉えるのか。今回の龍太のように序盤からトップグループに食らいつき、行けるだけいって中盤、終盤はおかれた状況の中でベストを尽くそうとするのか、レース全体を高いアベレージで最後まで走り続けて結果を出そうとするのか、その選択になると思います。もちろんチームとしても今回のレースに向けて新たにエンジンを組み直し、これまでとは違ったアプローチにトライしてみたりとやってきました。でもレースを見て未だ足りなところがあると感じたので、次のレースはST600クラスのみですし、このインターバルにチームの総力を挙げてマシン全体の見直しを図り、オートポリスにはTカーを持ち込んでST600に集中します。J-GP3クラスの徳留真紀は、今年からニューマシンNSF250Rを走らせているということで、開幕前のテストからさまざまなトライをしてきているのですが、そのアプローチの中において、チームとしてベースと考え大事にしようとしていた部分をいつしか見失ってしまう流れになってしまっていました。今回のレースに向けてエンジンベンチを回したりして開発作業を進めてきたのですが、ずれていた方向性を修正するのに時間がかかったりして、結果的にレースでは5位になんとかたどり着いた、という状態でした。でも今回のレースウイークで方向性の修正はできたので、次はもう少し高いレベルのところから走り出しできますのでもっと上を狙えるはずです。

高橋巧選手

金曜のARTテスト、土曜日の予選とマシンが走行ごとによくなっていき、決勝朝のウォームアップ走行でさらによくなってと尻上がりにマシンがよくなっていたので決勝はいいスタートを切り、落ち着いてトップグループでレースをするように心がけました。実際にうまくスタートで飛び出すことができ、中須賀選手と一騎打ちになりましたが、ペース的にも余裕はあったので、抜かれても最後に仕掛けて前に出ればいいと思って走っていたのですが、第2ヘアピンのいちばんスピードが落ちるところであっという間に転んでしまいました。すぐにマシンを起こして走り出したのですが、右手の親指を怪我してしまい、力が入らずにペースを上げることができませんでした。まずはケガを治すことに専念します。いいレースができる手応えは十分あっただけに残念です。

小林龍太選手

 テストからハマってしまい、レースウイークに入って金曜、土曜と少し上向きになり、予選2回目でかなりいい状態にマシンがまとまってきました。決勝日朝のウォームアップ走行でさらにマシンのセッティングを変えて、その状態で決勝を迎えました。サイティングラップの走り出しでトライした方法でスタートダッシュがうまくいったので、レースのスタートでもトライしたら思った以上にうまく飛び出すことができ、1周目は3位でクリアすることができました。とにかくトップグループから離されないように付いていけるところまで付いていこうと考えてチャレンジしました。ペース自体は十分に付いていけるもので、その部分では自信になりましたが、10周を過ぎたあたりからマシン的に厳しい状態となり、ペースが大きく落ちてしまいました。結果は残念ですが、このレースウイーク中に自分の走り方に関して非常に大きな収穫がありました。これを再来週のオートポリスのレースで生かし、さらに大きくジャンプアップしたいと思います。

浦本修充選手

 決勝に向けてセッティングを変えたのですが、それで自分の乗り方も変わってしまったのかもしれませんが、レースではマシンのフィーリングが大きく変わってしまい、自分の走りがしにくい状況になってしまいました。スタートで出遅れてしまい、トップが逃げているのが見えたので早く追い上げないとと落ち着いてまずは自分の走りをすることを意識していたつもりだったのですが、どこかに焦りがあったのかもしれません。本当に残念な結果で言葉がありません。

徳留真紀選手

 2年ぶりの筑波のレースだったのですが、事前テストの1本目でパッと走って1分0秒台に入ったのでそこからさらにタイムを詰めていけると思っていたのですがそこからなかなかタイムが上げられず、結果的に決勝朝のウォームアップ走行でマシンの仕様を大きく変更し、決勝はさらにアジャストして走ることになりました。いいところもあったのですがネガな部分も出てしまい、特に序盤はあまりいいフィーリングではなかったので苦労しました。ですが周回を重ねるごとに自分のリズムとマシンの動きがあってきて、結果的に5位まで順位を上げることができました。本当は3位争いのグループのいちばん前までいきたかったのですがもうちょっと及びませんでした。

2年ぶりの全日本筑波

高橋巧選手

小林龍太選手

浦本修充選手

徳留真紀選手