MUSASHI RT HARC-PRO

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レースレポート

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全日本ロードレース選手権 第1戦 in もてぎ

開催日
2012年3月31日(土)〜4月1日(日)
開催サーキット
ツインリンクもてぎ
天候
決勝 晴れ-路面状況:ドライ
出場クラス
JSB1000/J-GP2/ST600/J-GP3
ライダー
高橋巧/小林龍太/浦本修充/徳留真紀
予選結果
高橋巧:1位/小林龍太:8位/浦本修充:2位/徳留真紀:3位
決勝結果
高橋巧:2位/小林龍太:18位/浦本修充:1位/徳留真紀:2位

レース結果

 いよいよ2012シーズン開幕。この戦いに向けてチームは昨年の暮れから準備を重ねてきた。特に今季は全日本で開催される四つのクラスすべて参戦することになり、いつも以上の忙しさでシーズンオフを過ごしてきた。開幕に向け、3月中旬に事前テスト、さらにはホンダの走行があり、チームは合計四日間、ツインリンクもてぎでテストを行うことができた。参戦する四つのクラスのマシン、ライダーも好調で、非常にいい雰囲気の中、第1戦を迎えることとなった。
 今回のレースにMuSASHi RTハルク・プロからは、JSB1000クラスに高橋巧、J-GP2クラスに浦本修充、ST600クラスに小林龍太、そしてJ-GP3クラスに徳留真紀というレギュラーライダー四人が揃い、それぞれのクラスで戦う。また今回は第1戦ということで、通常は金曜のART合同テストからレースウイークはスタートするが、木曜日に特別走行が設けられたことから一日多いスケジュールとなった。このためにチームは水曜日にサーキット入りし、レースへ向けて準備を行った。

JSB1000

 3月のテストでは自己ベストを更新し、さらにコースレコード近辺のタイムでロングランテストも行うという安定した速さを見せ付けた高橋巧。マシンも昨年使用したものからバージョンアップし、同じセッティングでもブレーキングが非常に安定し、より高いスピードでコーナーへ飛び込み、早いタイミングで加速に入れるようになっていた。
 迎えた土曜日の予選。昼過ぎになって雨がパラパラと降り出し、その中で予選最初の30分間の走行が行われることとなった。路面を薄らと雨の膜が覆うが、そこから雨量は増えない。このセッションを3位で通過した高橋は、続く第2セッションに進んだ。このインターバルで雨が強さを増す中、早めにタイムを出そうと高橋はアタックに入り、4周目に2分3秒064を刻んでトップタイム。さらに第3セッションに進むことになったが、雨が激しさを増し、土砂降りになったことから第3セッションは中止された。この結果、高橋はポールポジションから決勝をスタートとすることとなった。
 決勝がスタート。2番手で1コーナーへ飛び込んだ高橋は3コーナー入り口で前を走るライダーのインに飛び込んでトップへ。5コーナーで抜き返されるものの、90度コーナーでトップに立つとペースを上げ、後続を引き離しに掛かる。1周目を終えて2位との差はコンマ4秒8だったが、1分49秒台へペースを上げた2周目を終えて2位との差は1秒4。3周目2秒3、4周目3秒3と広げ、6周終了時点では4秒7まで差が広がった。しかし7周目に1分50秒台へタイムを落とすと、そこから49秒台へ再び上げることができない。2位のライダーが1分50秒から49秒台へタイムを上げるのに対し、高橋は1分50秒前半から中盤ということで、ラップするごとにその差が縮まっていく。14周目にはその差がコンマ2秒まで詰められると、この周の最終コーナー立ち上がりで高橋はタイヤを大きくスライド。これで加速が鈍り、トップの座を明け渡すこととなった。それでも後続との差は既に大きなものとなっていたことから単独で2位を走行し、そのままチェッカーとなった。

ST600

 改造範囲の狭いこのクラスでは、安定した性能維持、さらにこのレース用に開発された溝付きのレース用タイヤのパフォーマンスがリザルトに大きな影響を及ぼす。タイヤの開発も行っている小林龍太は昨年末からテストのために積極的に走りこみ、新型となったブリヂストンR10 EVOを装着して今回のレースに臨むこととなった。
 金曜日午前中はトップタイムをマークしたが、午後はタイヤの性能確認のために中古タイヤで走行。ここで今ひとつ走りのリズムを崩してしまい、翌日の予選では苦戦を強いられることとなってしまう。レースラップでは問題ないのだが、レース周回以上の走行を重ねたタイヤを使用したところ、思った以上のスライドが起きてしまい、思うようにマシンをコントロールできなかったのだ。予選は新品タイヤで臨んだが、本来の走りのリズムがなかなか取り戻せず、1分56秒158で8番手からスタートすることとなった。
 決勝がスタート。うまくスタートを決め、1周目で4台を抜いて4位に上がった小林。2周目に1台をパスし、3位に上がる。さらに4周目のV字では2位に上がり、トップにコンマ2秒と迫る。5周目には1台に抜かれ、それでも安定してトップグループが刻む1分55秒台でラップ。表彰台が狙える位置で走行していたが、12周目のV字コーナーでスリップダウン。すぐにマシンを起こして再スタートしたが、トップグループからは大きく離されてしまう。幸いなことにマシンのダメージはなく、18周を走りきって18位フィニッシュ。ポイント獲得を果たした。

J-GP2

 昨年のチャンピオンマシンCBR600 HP-6は浦本修充に託され、3年連続タイトル獲得へ向けて戦うこととなった2012シーズン。昨年末に行ったテストではいいタイムをマーク。このときのテストで転倒はあったもの、非常にいい感触でマシンの乗り換えをすることができた。3月中旬の最初のテストではややセットアップに悩んだが、ホンダのテストから上向きとなり、調子を上げてレースウイークすることとなった。
 予選は風が強く、しかも強く吹いたり弱まったりと予測できない。このため、ある程度風に吹かれてもコースから飛び出したりしないようなマージンを持ちながら走行しなければならない。各ライダーともにタイムを伸ばせず、浦本も風にあおられながら1分54秒812をマーク。このタイムで予選2番手となった。
 決勝はスタートで出遅れ、1周目を6番手でクリア。ここから追い上げを強いられることとなった。3周目に3位まで上がるが、トップ2台との差は1秒6まで広がってしまい、ハードプッシュをしなければならない。金曜日のARTテストで装着したハード目のタイヤのフィーリングがよかったことから、決勝でも同じものを装着したのだが、放射冷却の影響で気温は11度までしか上がらず、浦本はアグレッシブに攻め込むことがなかなかできない状態となっていた。それでも丁寧なマシンコントロールを心がけ、5周目の1分54秒台へタイムを入れると、ここから連続して54秒台でラップ。7周目にはコースレコードとなる1分54秒629を記録してトップ2台に追いついた。浦本の走りに呼応するように、前の2台も54秒台へタイムを入れ、ハイペースでのトップ争いとなっていく。浦本は10周目に2位に上がると、さらに11周目の90度コーナーでインを刺し、トップへ。しかしトップを走っていた渡辺一樹選手も積極的に前に出ようとアタックし、抜きつ抜かれつの展開となった。勝負は最後の90度コーナーとなり、ここでインに飛び込んだ浦本がそのまま抑えきってトップでチェッカー。嬉しい全日本初優勝を遂げた。

J-GP3

 今年からチームに加わった徳留真紀。グランプリ経験もあり、世界ランキング2位に輝いた経歴を持つ小排気量クラスのスペシャリストだ。グランプリへ旅立つ前に一度、本田監督は徳留にチーム入りを誘ったことがあるが、GP行きを既に決めていたことからこのときは実現せず。10年以上の時を経て今回、一緒にレースを戦うこととなった。
 今年から小排気量クラスは本格的に4サイクル化され、チームは新型マシンであるホンダNSF250Rの開発をしながらこのシーズンオフを過ごしてきた。しかし世界的に供給されるマシンのため、開幕前はパーツの需要と供給が間に合わず、開発を進めたくてもなかなかパーツが手に入らないという状況で、チーフエンジニアの堀尾勇治によると、マシンの仕上がりは70%程度とのこと。シーズンを戦いながら、さらにポテンシャルを上げていくことになる。
 それでもレース経験豊富な徳留は木曜日から着実にセットアップを進めていく。予選はドライながら、南南西の10m/sを越える強風が吹く中で行われた。この風向きだと、タイムに大きな影響を及ぼす裏ストレートは向かい風。メインストレートではアウト側からイン側へマシンを押される。軽量マシンで争われるJ-GP3クラスのライダーにとっては実に厄介なコンディションとなった。そんな中、徳留は安定してラップを刻み、2分3秒082と2秒台へ入れることはできなかったが、それでも4番手からスタートすることとなった。
 このクラスは当初、15周でのレースが予定されていたが、ウォームアップラップを終えてメインストレートに戻ってきた2台のマシンが接触して転倒したことからスタートがディレイ。1周減算されて14周のレースとなった。まずまずのスタートを決めた徳留は3番手でオープニングラップをクリア。前を走る2台を追いたいところだが、ペースを今ひとつ上げることができない。なかなか2分1秒台ラップができず、2周目には4位となった徳留だったが、6周目には1秒台へ入れることに成功。しかしこのあたりから5位を走るライダーとのバトルになり、思うようにタイムを上げることはできない。ラストラップにトップグループに1台が転倒。さらに2位に入ったマシンはマシンレギュレーションが全日本仕様ではないことから章典外での参戦だったため、バトルを制して3位フィニッシュとなった徳留が2位表彰台に上がることとなった。

チームメンバーのコメント

本田重樹監督

 J-GP3クラスの徳留真紀はテストの段階から今ひとつ、タイヤとマシンのマッチングに苦しんでいました。でもそこはベテランの力で、ある程度のレベルに仕上げて決勝を迎えることはできましたが、予選日の午後に降った雨の影響から気温が大きく下がり、非常に路面温度が低いコンディションでのレースとなり、タイヤのグリップを思うように生かすことができにくい状況となってしまいました。レース序盤はそれでも新品タイヤということでそこそこのパフォーマンスを見せることはできていましたが、レース後半になると旋回力が落ちてしまい、厳しい戦いとなってしまいました。それでも粘りの走りを見せ、最終的には2位表彰台を獲得できたのはベテランの味というものを存分に発揮したレースだったと思います。今後につながるいい結果となりましたし、まだまだ開発途上のマシンなので、次戦に向けてさらに開発のピッチを上げて頑張りたいと思います。
 ST600クラスの小林龍太は、いいモノを持っているのですが、現状のパッケージングでライバルに対して抜け出るだけの力を持っていませんでした。それでもスタート直後に4台のマシンを抜いて戻ってきた走りはやる気を感じましたし、レース終盤には彼がいちばん得意としているV字コーナーで攻めすぎて転倒したのは、小林龍太は転倒の少ないライダーでレース中の転倒は非常に珍しいことなのですが、それほどハードプッシュしていたということで、強い気持ちを感じますし、ぜひこのレースを糧に大きく成長してもらいたいと思います。
 J-GP2クラスの浦本修充は、本当に嬉しい全日本初優勝となりました。ただ一つだけ注文するとしたら、テストのときからアベレージタイムがよくて、それをレースで出せばもっと楽な展開にすることができたはずなのに、スタートで出遅れ、追い上げる中でタイヤを消耗してしまい、自ら苦しい戦いにしてしまった点は修正してもらいたいと思います。それでもレースで勝てたということは非常に喜ばしいことですし、先輩である中上貴晶がマークしたコースレコードをコンマ1秒ですが上回ったことは浦本の成長を感じる部分で、今後が楽しみになりました。
 JSB1000クラスの高橋巧は、非常に残念な結果となりました。テストから順調で、高いアベレージでレースラップもこなすことができていたので、今回のレースに関しては『勝てる』という確かな手応えを感じていたのですが、レースは魔物ということを再認識させられることとなってしまいました。タイヤメーカーを含め、協力各社の方々とディスカッションを進め、次戦は今日できなったぶっちぎりでの優勝を果たしたいと思います。チームとしては今年、久々に全日本全クラス参戦ということで目標は『全クラス制覇』を掲げ、このシーズンオフに準備を重ねてきました。最終的には全クラスチャンピオン獲得ができるようにしたいという意欲を持って開幕戦に臨みました。残念ながら若干準備不足のクラスもあり、開幕戦では全クラス制覇が果たせませんでしたが、それでも今日のレースの点数は70点から80点くらいはもらえるのではないかと思います。今後の全日本では1度、2度、全クラスで優勝し、MuSASHi RTハルク・プロデーという日を作りたいと思います。今回もたくさんの応援をいただきありがとうございました。さらに頑張りますので応援、宜しくお願いします!

高橋巧選手 JSB1000

 悔しくて言葉がありません。序盤は自分のイメージどおりだったのですが、途中から思うような走りがまったくできなくなり、なにをどうしてもタイムを上げることができませんでした。テストからいいタイムで走ることができていたので、いい結果が出せると思っていたのですが。とは言っても結果は結果で終わったことなので気持ちを切り替えて、次のレースでぶっちぎって勝ちます。

小林龍太 ST600

 久しぶりにトップグループでレースを走ることができて楽しかったのですが、それほど激しく攻めていたつもりではなかったのに一瞬にしてフロントが切れ込んでしまい、転倒してしまいました。あのV字コーナーはリズムよく走れる場所だったので、それほど無理をしている意識はなかったのですが、スピードが高すぎたのかもしれません。トップグループに終盤まで加わってレースをしたのも久々ですし、この状態なら十分にトップを狙えるという手応えを感じたレースでもあり、そういう意味では大きな収穫のあった1戦でした。転倒してしまいましたが、かろうじてポイントも獲得できましたし、次の地元筑波のレースではぜひ勝ちたいです。

浦本修充 J-GP2

 本当に嬉しい初優勝となりました。もっと楽な展開で勝てるだけの準備をチームがしてくれていたのにスタートで出遅れ、苦しいレースに自分でしてしまったのは反省点です。中上先輩のタイムも上回ることができて自信にもなりましたし、さらにマシンに乗り込み、タイムを上げていって自分のレベルも高めたいです。

徳留真紀 J-GP3

 新型マシンということで思うように準備が進められず、慌ただしくレースウイークを過ごしました。本当はトップ争いに加わりたかったのですが、残念ながら現状のパッケージングではそこまでの仕上がりではありませんでした。ですがチーム力の高さは十分に感じていますし、レースが進むにつれ、マシンのポテンシャルが上がっていくことは間違いないので焦らず、チャンピオンシップをしっかりと見据えながら一つ一つのレースを戦っていきたいと思います。

2012シーズンが開幕!

高橋巧選手

浦本修充選手

小林龍太選手

徳留真紀選手

浦本選手が全日本初優勝!