「植物バイオ事業」創設の背景 ──東三河の植物の力で人生100年時代を 美しく、健やかに

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武蔵精密工業(以下、ムサシ)はこれまで、自動車部品の製造をコア事業に大きく成長をしてきました。現在ではモビリティ、インダストリー、エネルギーソリューション、ウエルビーイングの4つの分野で新規事業を立ち上げ、事業展開を進めています。

2022年9月に新設された「植物バイオ事業」は、ウエルビーイングの領域で「ヘルスケア」と「アグリテック」の新規事業開発を進める、少数精鋭チームです。

今回は、植物バイオ事業部で部長を務める継国 孝司さんにインタビュー。事業部立ち上げの背景から今後の展望など、挑戦への意気込みを語ってもらいました。
継国 孝司 植物バイオ事業部 部長
大手化粧品会社の研究所にて約30年間勤務。その後、栃木県内で起業し、ヘルスケア商品の研究開発・製造・販売及びコンサルティングサービスを提供する会社の研究開発責任者として10年以上経営に携わる。以前から交流のあった武蔵精密工業から声がかかり、2022年9月に植物バイオ事業に参画。サービスローンチを見据え、複数のプロジェクトを推進している。

東三河の土地が生んだ、唯一無二の植物由来成分

──ムサシの新規事業として「植物バイオ事業」が立ちあがりました。なぜ東三河の地が拠点に選ばれたのか、背景をえてください。


東三河地方は、日本最長の断層帯である中央構造線上に位置しています。

東三河の土壌には、植物の機能性成分(ファイトケミカル)の生成において、世界的に見ても非常に有効で稀有な特徴があります。それを活かしたウエルビーイング領域の新たな取り組みができないかと数年前から注目していました。

中央構造線という言葉を初めて聞く人も多いと思います。これは大昔の土地が表面に現れた断層で、土壌や地形、気候、水などが植物を育てる上で非常に有利とされています。

植物にとって土壌環境はとても重要で、例えばヨーロッパで育てた植物を日本に運ぶと、うまく育たなかったり有効成分が変わってしまったりすることがあります。そのことから、東三河の植物に注目することで地方創生の手がかりを得て、バイオ業界全体の発展にも貢献できるのではと考えたのです。

植物バイオ事業部は現在、「ヘルスケア」と「アグリテック」の領域に注力し、社会課題の解決に向けて動き出しています。

ビジョンの実現を目指し、より大きな舞台へ挑戦

──植物バイオ事業部は今回、継国さんの参画とともに新たに新設されました。どのような背景、社内の動きがあったのでしょうか?


ムサシが出資している企業の1つに、化粧品の製造・販売を行う企業があります。東三河で育った植物の成分を活かした化粧品を展開しており、私はそのブランドの企画・開発・製造に外部から少し携わっていました。

そのためムサシとの交流も数年前からあり、東三河の植物研究にも関わっていました。特にこの1〜2年で研究が進み、化粧品以外に成分を転用できる可能性が高まりました。これを受け、ムサシでも新規事業立ち上げの機運が高まったというわけです。そのタイミングでムサシから私に声をかけていただきました。



──継国さんは自分の会社を経営する立場でもありました。ムサシの事業に対してコミットすることに戸惑いはなかったのでしょうか?


正直、最初は迷いましたね。大企業の中で新規事業を立ち上げる大変さも理解していましたし、10年以上続けてきた会社の経営も順調だったので、そこから離れることに抵抗がなかったわけではありません。ただ、それ以上に新たなチャレンジが出来る機会をいただいたことと、新規事業創造へのワクワクが大きかったんです。

ムサシは14か国に拠点を有するグローバル企業なので、事業を通して世界に大きなインパクトを与えられる可能性があります。加えて、私のこれまでの経験を存分に活かせる領域であったため、自分なりの勝機もありました。

長年勤めた前職の企業でも、異なる分野での事業立ち上げに関わってきましたし、私自身も起業の経験がある。ヘルスケア領域のビジネスは私の専門分野でもあるので、ムサシのリソースとうまく掛け合わせることができれば、事業が伸びる可能性は十分にあると判断しました。

最後の決断に至った最も大きな理由は、ムサシの代表取締役社長・最高経営責任者の大塚社長が掲げるビジョンに、私が強く共感した事です。初めてお会いしてプレゼンをした時から何か通じる部分がありました。是非、一緒に仕事をして見たいと思える大きなパワーを持った方でしたね。

始まりは東三河の植物を活用したヘルスケアとアグリテックの事業ではあるものの、将来的に目指すのは、環境問題や暮らしの不安といった社会課題を解決する、ウエルビーイングな社会を作ること。目指す方向が同じであれば、残りの人生はムサシに賭けてみたいと思えたんです。

最終的に、仕事の軸足をこちらに移すことにしたのですが、その前には家族と一緒に何回も東三河を訪れて、土地柄や風土、食文化などの素晴らしい所を実際に体感し、見て回りました。最終的には家族からも「いいんじゃない?」と快諾してもらい、それまでの取引先にも事情を説明して事業を縮小してきたので、心置きなくチャレンジができます。

ものづくりで培った独自技術 × 東三河由来の植物

──植物バイオ事業部の部長に就任しましたが、会社からはどんなミッションを与えられているのでしょうか?

東三河の土壌で育まれた自然を、人々の健康へ還元する。そのために植物バイオ事業を成功させ、ウエルビーイングな社会を実現させることが私のミッションです。

特にヘルスケア市場はレッドオーシャン(注: 血で血を洗うような競争の激しい既存市場)で、後発の我々には不利なことも多いわけですが、東三河の素晴らしい自然の恵みとムサシの独自技術やノウハウによって、新たな市場を生み出せると考えています。

自動車部品業界で培った知見だとしても、ものづくりに共通する部分は多いんです。試作品に対する精度のこだわりや品質管理のクオリティ、システマチックに効率よく量産するためのテクノロジーなど、世界トップレベルの技術がムサシには多く存在します。

精密化学メーカーが自社のコア技術を応用して独自の化粧品や健康食品を開発し、成功を収めた事例があるように、ムサシもヘルスケアやアグリテックの領域で大きな成功を収めるチャンスは十分にあります。

──新たな挑戦ということで、課題も当然あると思います。そのあたりの難所の乗り越え方にも工夫が必要そうです。

新規事業の初期フェーズということもあり、あらゆる可能性を視野に入れて活動しています。その中にはBtoCのビジネスモデルもあるのですが、長年、BtoBの領域で戦ってきたムサシだけでは流通・販売の部分で弱みが出る可能性はあります。

その時に、外部の力を頼るのか採用を強化するのか、もしくは出口として別の道が考えられないかを検討するのか……。課題解決の方法は無数に考えられます。適宜見極めながら複数の戦略パターンを描いています。

新規事業参入にあたっては、特にスピードは最重要視しています。ここ数年のAIの進化によって、研究や商品開発のスピードが加速しています。逆に上手く活用できれば、新規参入組でもあっという間に追いつくチャンスでもあります。

また、地元の方には当たり前すぎて、案外見逃している素晴らしい所が東三河には沢山あります。地元出身ではない、異分野の私だからこそ気づく東三河やムサシの素晴らしい価値ある隠れた独自資産を上手く利用して、強みにしたいと思っています。

さらに、ムサシには変革と挑戦のカルチャーがDNAレベルで宿っています。この数年の間にも アグリトリオicuco(イクコ)Musashi AIなどのスタートアップが社内から生まれているので、そういった追い風も味方にしたいですね。

産学連携を強みに、商品開発とビジネスモデルの確立へ

──ムサシは産学連携も強化し、植物バイオ事業の推進に力を入れています。現在の状況について、可能な範囲で教えてもらえますか?

2017年10月には豊橋技術科学大学との包括連携協定を締結し、機能性物質が生まれるメカニズムの共同研究を開始しました。2021年8月には奈良先端科学技術大学院大学との共同研究に向けた包括連携契約を締結しています。その分野の第一線で活躍する研究者と研究を進められることは、非常に大きなアドバンテージです。

基礎研究の分野は長年の研究実績が大きな役割を果たしますので、大学の研究室と連携しながら商品開発に結び付けたい考えです。さらに2023年4月からはムサシ社内にも新たな研究室を設立し、自社研究にも注力できるよう設備投資を強化しました。

現在は複数の概念検証を同時並行させながら、特許出願などの準備も進めています。公開がまだできないものも多いのですが、用意が整い次第、順次発表し続けていく予定です。



──これからビジネスモデルを確立する上でも、採用強化が非常に重要になると思います。植物バイオ事業部はどんな組織で、どんなメンバーが活躍できるかを教えてください。

これは私自身のポリシーでもあるのですが、フラットに意見交換できるチーム作りを大切にしています。本人の意思やキャリアプラン、プライベートを尊重しながら、仕事が楽しめる環境作りを心がけています。高いモチベーションが発揮しやすい状態にすることで、自発的な行動が促され、質の高い仕事が継続して行えると考えています。

大塚社長からは「社会課題を解決して世の中から期待される事業にしてほしい。そのためには分社化も視野に入れていい。」とお言葉をいただいています。ムサシらしいですよね。

私はこのことをメンバーにも伝えていて、一番自分がワクワクするやり方で植物バイオ事業を広げていってほしいと話しています。現在の事業フェーズは、とにかく失敗にめげず何回もトライするタフな精神が必要なので、やりがいを持てることは特に重要です。

事業部発足時から、人材育成も大きなミッションの一つであるとメンバーには伝え、様々なチャレンジ目標を設定し、達成しています。昨年度、メンバー2人はヘルスケア商品に関わる専門性の高い資格を5つも取得しました。全く分野が異なるので、かなり大変だったと思いますが楽しみながら頑張ってくれました。資格取得は事業の推進に大きく役に立っています。

また、メンバーには、「今自分が取り組んでいる仕事は“Go Far Beyond!”と自信を持って言えるのかを常に自問自答しながら取り組もう」と言っています。これまでのムサシらしさを維持しながらも、新しいムサシに相応しい人材へと進化し続けてもらいたいです。


商品開発が進み、事業の拡大フェーズが目前に迫った際には採用にも一気に力を入れていくことになります。

その時に活躍できるのはバランスの取れたスキルを持つ平均値な人ではなく、1つのことしかできないけれど、その一点なら誰にも負けないという突出した分野を持ち、情熱を持ち続けられる人だと思っています。私が思う“優秀”な人とはそんな人ですね。

人の心を本当に動かすのは、成功したカッコいい姿ではなく、愚直に挑戦し続ける姿だと思っています。メンバーには、社内はもちろん協業先の人も巻き込める位の大きな情熱を継続して持ち続け、チーム力でやりきる力を発揮して欲しいと思っています。

個では達成が難しい事でも、チームでなら簡単に達成できる事例が数多くあります。

まずは、私たちが一緒に働きたいと思える魅力的な人になり、魅力的な仕事環境を整えれば、自然と“優秀”な人材が集まって、無敵チームとなるでしょう。それも成功の大きな鍵ですね。

これから新しい市場を作っていくことは簡単なことではありませんが、それ以上に大きな可能性を秘めた挑戦です。チャレンジ精神旺盛なメンバーと一緒に、世界をあっと驚かせるような先進的な事業展開を進めます!ぜひ注目してもらえたら幸いです。
▼武蔵精密工業では、現在一緒に働くメンバーを募集しています。詳細は下記サイトをご覧ください。
https://www.musashi.co.jp/recruit/ 

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