2020年4月分社化。ムサシから生まれた新規事業「アグリトリオ」の立ち上げストーリー(代表取締役 石川浩之)

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2020年4月17日、農業関連の新規事業「アグリトリオ」は法人化しました。

武蔵精密工業(以下、ムサシ)から分社化する形で、現在は全国にフランチャイズを展開。個人と農家をつなぐプラットフォームサ-ビス「農How®(ノウハウ)」を提供し、農家の人手不足解消に貢献しています。

なぜ農業経験の無い私たちがこの領域に参入し、全国に向けて事業の成長・加速に挑んでいるのか。この記事では、法人設立までのストーリーと現在の取り組み、今後の展望などをお伝えします。
石川浩之
愛知県豊橋市生まれ。豊橋商業高校を卒業後、地元企業である武蔵精密工業へ入社。製造部門への配属で数年間の現場作業に従事した後、経理部門からの要請により経理へ転属し、製造と間接を熟知した社内でも異色の経歴。武蔵精密工業の社内公募型スタートアップ「Musashi Innovator’s Gate 2017」へ応募し、本事業の企画が採用され、新規事業として立ち上げを行う。2020年4月に分社化すると同時に、株式会社アグリトリオの代表取締役に就任。人生のミッションは、「人とひとをつなげ、誰もが活躍できる世の中にする」。

社内公募型スタートアップ誕生の背景

「アグリトリオ」が新規事業プロジェクトとしてスタートできたのは、社内新規事業制度の「Musashi Innovator's Gate 2017」に参加し、事業化の権利をいただけたからです。

このプログラムは約4〜5ヶ月の期間で行われ、最終回ピッチの社内外からの評価によって事業化されるかどうかが決まります。

事業アイデアの条件は、「自動車産業ではないもの」「社会的に意義のあるもの」「資本がかからないもの」の3つです。最終的に私たちは事業ドメインに農業を選び、現在の法人化にまで至ります。

もともとは福祉サービスなどもアイデアとしてありましたが、当時の私たちの事業アイデアが未熟だったこともあり事業化が難しく、最終的に辿り着いたのが「農業」だったんです。

結果的に「Musashi Innovator's Gate 2017」で1位は逃しましたが、ムサシの本社がある愛知県豊橋市ですぐに取り組めるアイデアだったこともあり、ピッチの審査員だった地元企業から良い反応をいただき、社長の一押しもあって無事に事業化のチャンスをいただけました。

「課題の質」を磨き上げ、提案の魅力が向上

新規事業プログラム期間中は、大変だったこともたくさんありました。特に苦労したのは、「課題の質」を上げることです。

プログラムで一緒に新規事業を考えるチームメンバー3人は非農家だったため、農業に従事される方々がお金を払ってまで解決したい悩み・課題がわからなかったんです。

そこで私たちは、70名の農家さんに150時間かけてヒアリングをし、課題発見に注力しました。ムサシ社員の協力があったおかげで、コネクションがゼロだったにもかかわらず、あっという間に農家さんとのパイプが作れました。

その後も、業界独自の用語(定植、神馬など)を調べて理解するのに時間がかかったり、サービス利用料が高すぎるとの声があったりと、一筋縄にいかないことも多々ありました。

本当に色々なことがありましたが、「課題の質」を高めることが一番の難所だったことに変わりはありません。

当初はフードロスの問題に取り組み、次に農機具のシェアリングサービスなども考えました。それでも収益性を確保する意味では十分なアイデアにならず、最終ピッチまで残り二週間というところまで試行錯誤は続きました。

こうして生まれたのが「農 How®」です。





最後は利用料金の「1時間あたり300円」という金額にもヒヤリングさせていただいた農家さんたちから良い感触が得られ、いよいよ本格的なサービス開発に入ります。

メンバー全員「非農家」マニュアル作成のヒントに

サービス開発に着手した際も、乗り越えるべき壁がたくさんありました。

農家さんはデジタルに馴染みが薄いことも多く、ウェブページやアプリのUI設計には頭を悩ませましたし、「人手不足に困っているエリア」と「農作業をしたい人がいるエリア」でのマッチングミスを解消することも大きな課題でした。

ただ、トライアルを重ねる中で、結果的に「独自の強み」につながるヒントを発見することもありました。それが「農業の動画マニュアル」です。

メンバー全員が非農家だったことと、自動車業界のマニュアル作りの知見がつながった瞬間でもありました。これがあれば、農作業が未経験であっても安心してエントリーできますし、当日の作業効率もアップします。
動画にこだわったのは、静止画ではわからない作業も多くあったからです。特にイチゴの収穫は手の動きが大事なので、それには動画の活用が最適だと考えました。

このアイデアは功を奏し、愛知県・静岡県を中心に農家が200軒以上、クルー(働き手)が30〜40代を中心に約4,000名登録してくださっています(2021年4月現在)。社内では、「農家のマニュアルを日本一持っている会社にしよう」と盛り上がり、さらなる事業成長を目指して取り組んでいます。

フランチャイズ展開に踏み切った理由

「農How®」は多地域展開を進めており、2020年10月からフランチャイズ(以下、FC)展開を開始しました。愛知・静岡での成功モデルをベースに、現在まで熊本や愛媛、茨城、新潟など、続々とサービス導入地域を増やしています。

このフェーズで苦しんだのは、運営の難しさでした。もともとはFCの発想はなく、直営での全国展開を考えていたんです。しかし、試行錯誤をするうちに、地域ごとに成功パターンが違うことがわかりました。浜松でうまくいっても、金沢ではうまくいかない、という具合です。

その中でも幸い、ムサシの看板の影響力は強く、メガバンクが力強くサポートしてくれたんです。私たちのサービスに興味がある会社を紹介してくださり、そこからご成約をいただけるようになりました。コロナ禍ということもあり、年間の商談件数はオンラインで100件以上です。

現在は全国展開をさらに強化するため、FC向けのトレーニングマニュアルなどを作成し、農家さんとのつながりの作り方やPR活動のポイントなどを伝えています。地域ごとに成功パターンが異なるので、今後はマッチング分析のデータ開示や数値分析をすることで解決策につなげていきたいと考えています。

もっと既存の「枠」を超えられる!目指すは世界的企業

今後はIPOをゴールに設定し、そこに向けてまずは47都道府県にFC展開することが目標です。これまで私たちの取り組みは、ビジネスの視点から見ると「地に足を着けて成長している」と評価されることが多くありました。

しかしこれをシビアに捉えるのであれば、「枠を超えていない」「成長力が弱い」と見ることもできます。ムサシ100年ビジョン「Go Far Beyond!」が2021年4月に発表され、社員はそれぞれに自分たちの枠を壊し、突き進もうとしています。そうした空気がある中で、今の成長スピードでは満足していられません。

だからここに宣言します。「アグリトリオは、ユニコーンを目指します!」と。

これからの展開としては、ドローンなどの高度技術を活用した農業支援や、人手不足を機械で解決できるサービスを構想しています。当社の「Musashi AI」といったAI事業との協業も視野に入れ、実現可能性を高めていきたいですね。

目指すのは農業だけでなく、一次産業の漁業や林業とのマッチング、さらには日本だけでなく東南アジアを起点にした世界へのアプローチです。グローバルな企業になることを目指し、これからも頑張っていきます。

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