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レースレポート

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全日本ロードレース選手権 最終戦 in 鈴鹿

開催日
2011年10月29日(土)〜30日(日)
開催サーキット
鈴鹿サーキット
天候
決勝 雨-路面状況ウェット
出場クラス
JSB1000/J-GP2/ST600
ライダー
高橋巧/中上貴晶/小林龍太・浦本修充
予選結果
高橋巧 (R1)4位・(R2)3位/中上貴晶 1位/小林龍太 10位・浦本修充 16位
決勝結果
高橋巧 (R1)5位・(R2)3位/中上貴晶 1位/小林龍太 8位・浦本修充 13位

レース結果

 2011シーズンもいよいよ最終戦を迎えることとなった。今季は東日本大震災により開幕戦がキャンセル。大幅にスケジュールが変更されたために、7月以降にレースが集中することになった。その影響から、最終戦前の事前テストが物理的に取れなくなってしまい、このレースに関してはテスト無しで行われることになった。10月末ということで、寒さも感じさせるコンディションは、これまでの戦いとは違ったマシンのセッティングが要求される。さらにJ-GP2クラスを戦う中上貴晶は10月初旬に開催された日本GPでケガをし、前回の第7戦岡山大会をキャンセル。復帰レースでいきなり、タイトル獲得を賭けて最終戦の戦いに臨むことになる。さらにJSB1000クラスを戦う高橋巧もランキング2位で最終戦を迎え、タイトル獲得の可能性を残している。チームはシーズンの集大成となるタイトル獲得という大きな仕事を成し遂げるべく、サーキット入りすることとなった。

JSB1000

 今回の最終戦は2レース制が導入され、さらに最終戦はボーナスポイントがそれぞれのレースに3点与えられることから、結果次第では大逆転も可能となる。ランキング2位に付ける高橋巧と、ランクトップの秋吉耕佑選手との差は19。小さな差ではないが、レースは何が起きるか分からない。
 事前テストがなかったことから、チームは5月に行われた鈴鹿2&4、7月の鈴鹿8耐のセッティングデータを基に、金曜日のART合同テストに臨んだ。ところが思うような走りができず、この日はトップから2秒遅れの5番手とやや出遅れてしまうこととなった。土曜日の予選は、優勝したオートポリス、好調だった前回の岡山国際大会の予選時のセッティングに変更して走行。 これがいい感触を得て、第1レースのスターティンググリッドを決めるQ1セッションは4番手、Q3セッションはフロントロー3番手に付けることができた。
 期待が高まる中、第1レースのスターティンググリッドに並んだ高橋だったが、直前に雨が降り出してしまい、スタートはディレイ。このレースウイークはここまですべてのセッションをドライコンディションで走行しており、ウエットでの走行は誰も経験していないことから、安全の確保のために5分間のフリー走行が行われその後、改めてスタート進行となった。 結局雨は小康状態となり、ハーフウエットでレースはスタートとなった。限られた時間の中、完全なウエットセッティングを施すことは物理的に不可能だったため、チームはドライベースにできる限りウエット路面に対応できるマシンに仕上げ、高橋をコースに送り出した。しかしドライベースのマシンで濡れる路面、レインタイヤでの走りは非常に相性が悪く、高橋は苦戦を強いられる。さらにスタートでやや出遅れてしまい、オープニングラップは7位で通過。7周目に6位、12周目に5位とポジションを上げ、ここでゴールとなった。高橋はこのレースで4位以上に入ることがタイトル決定阻止の最低条件だったが、それがクリアできなかったことから、秋吉選手がこのレースで優勝し、チャンピオン獲得を決めた。
 ランキング2位獲得を果たすべく、第2レースに臨んだ高橋。インターバルの時間を使ってチームはウエット用セッティングを施すことができた。まずまずのスタートを切り、序盤は4位で走行する高橋。ランキング2位の座を争う柳川明選手との3位争いとなった。ラップタイム的に柳川選手を上回っていたことから、4周目にパスするとその差を引き離しにかかるかに見えたが、ここからペースをさらに上げることができない。8周目に再び柳川選手に抜かれてしまい、その背中を見ながら周回することとなった。それでもラスト2周となったデグナー進入でインへ飛び込んだ高橋はパッシングに成功。そのまま抑えきり、3位でチェッカーとなり、ランキング2位を決めた。

J-GP2

 金曜日午前中の走行をこなし、トップタイムをマークして周囲を安心させた中上。しかし途中で肩の痛みからピットインし、連続走行がまだ厳しい状況であることからチームは午後の走行をキャンセルし、静養させることとした。15周のレースを無事に走り切ることができるのか、まったく予断を許さない状況であった。
 休養を取ったことで体調も上向きとなって臨んだ予選では、コースレコードをマークしてポールポジションを獲得。目標としていたGP250クラスのコースレコードに1000分の数秒差という、負傷を負いながら驚異的なラップタイムを記録することに成功していた。
 決勝は雨となってしまい、各クラスとも安全を確認するために5分間のフリー走行が急遽行われたことから、15周で予定されていたこのクラスのレースは12周に減算されて行われることとなった。中上はややスタートで出遅れ、後ろから他のライダーが1コーナーのベストラインに入ったが、高いスピードを保ったままインに飛び込み、ホールショットを奪う。しかしオーバースピードだったようで続く2コーナーの外側に大きくはらんでしまう。トップの座は誰にも渡さないという中上の執念を見せたスタート直後の走りとなった。S字入り口で早々にトップに立つと、いつものようにペースを上げて後続を引き離しにかかる。後ろから山口辰也選手が追いかけて来て、レースは二人の一騎打ちとなった。東コースで山口選手を離し、バックストレートから1コーナーまでの区間で差を詰められる展開となったが、ラスト4周になったところで中上がスパート。その差を一気に広げ、最終的には2秒4差でトップチェッカーとなった。タイトルを争っていた関口太郎選手は9周目のスプーンコーナーで転倒してしまい、中上が優勝でタイトル獲得を決めた。

ST600

 気温が大きく下がった10月末という時期に行われた最終戦。このクラスは市販されているタイヤを使用しなければならないというレギュレーションで、ブリヂストンタイヤでは登録されている3タイプの中のミディアムかソフトのタイヤチョイスが、このレースには適している。小林は前回のレースでミディアムを選択。マシンとのバランスがうまく取れなかった反省から今回は、金曜日のART合同テストでミディアムタイヤをチョイスし、そのセットアップに専念した。一方の浦本も小林同様ミディアムをチョイスして金曜の走行に臨んだが思うようなグリップが得られず、タイムを伸ばすことができなかったために土曜日からの走行は他の多くのライダーがチョイスしているソフトタイヤを装着することにした。一発のタイムよりも高いアベレージラップを刻めるようにマシンをセットアップしていく小林。スターティンググリッドは10番手となった。一方の浦本はタイムを出すタイミングがうまく取れず、16番手となった。
 決勝日最初のレースとなったこのクラスは雨が降り出す前に行うことができた。小林はうまくスタートで飛び出しに成功し、序盤は3位争いの中の6位前後を走行する。浦本は得意のスタートダッシュを決めることがきず、12位前後で序盤は周回する。4台から5台での3位争いとなり、マシンをぶつけ合いながらのレースとなった小林は安定したペースでラップし、表彰台も見えかけていたが、終盤にペースを落としてしまって8位でチェッカーとなった。浦本もペースを上げることができず、13位でフィニッシュした。

チームメンバーのコメント

本田重樹監督

 ST600の小林、浦本の二人は、非常に苦しい今年の戦いを象徴するようなレースとなりました。そんな中で小林は他のブリヂストンタイヤユーザーとは異なるタイヤチョイスをするというトライを行い、自分の考えた可能性にトライするという積極的な姿勢を見せたことはとても頼もしく思えましたし、そこで得られたデータは、今後のレースに生かされるはずです。浦本は今年初めてこのクラスに参戦したということで、セッティング能力不足などそういう部分でまだ若さを露呈しましたが、自分の中で最大限の努力をし、順位を一つでも上げようとしたチャレンジする姿勢は今後の彼の成長のためにもよかったと思います。終わってみれば小林がランキング4位、浦本が8位と一桁ランキングでシリーズを終えたことは、彼らの努力の成果だと思うし、厳しい状況の中でそうした結果が残せたというのはチームにとっても嬉しいことです。
 J-GP2クラスの中上貴晶は、今回は本当に苦しい戦いで厳しい体調の中、本当によく頑張ってくれました。昨日の予選でコースレコードをマークしてポールポジションを獲得。そしてレースでは優勝し、参戦したすべてのレースでポールtoウインという結果を残せたことは後世に残る快挙だし、中上のポテンシャルの高さを十分にアピールすることができたと思います。決勝では厳しい体調でありながら、決して心が折れることなくプッシュし続け、最終的には独走で優勝に持ち込み、チャンピオンが獲得できたのは本当に喜ばしいことです。来年はあのマシンを市販化する予定で、その開発も彼に担ってもらいましたが、それも順調にこなしてくれて、チームにとっても実り多いシーズンとなりました。この結果が今後のJ-GP2クラスの活性化に少しでも寄与できればと思います。
 JSB1000クラスの高橋巧は、昨年から抱えているウエットでのポテンシャルを高めること、セッティング能力といった課題を今年もまだ十分に克服できていないことが露呈したレースとなってしまいました。それでも去年と比べるとトップとの差はだいぶ詰まったし、もう少しウエットでのセッティング能力、そしてスピードを上げれば、もっと上にいけると思いますし、ランキングも2位で終えましたが、もっとチャンピオンを脅かす存在のランキング2位になることができると思います。来年もさらに精進し、より高いレベルの走りができるように頑張ってほしいと思います。
 今年は東日本大震災がシーズン直前に発生し、スケジュール的に厳しい1年となりましたが、一定の成績を残すことができたのは皆様の応援があってのものと、本当に感謝しています。1年間応援、ありがとうございました。

高橋巧選手

 まだまだ雨の走りがダメなのを痛感しました。二つのレースともに自分としては全力で走ったのですが、トップとの差は歴然としており、これを詰められるようにしないといけないと痛感しました。第2レースはなんとか表彰台には上がろうと、最後は4位で終わるくらいなら転んでもいいと思い切ってデグナー1個目のインに飛び込みました。なんとか3位表彰台に上がることができてよかったです。

中上貴晶選手

 とにかく肩の痛みとの戦いでした。こんなにつらいレースは初めてです。最後の2ラップは痛みが激しく、ハンドルを持っていることさえもつらい状況で、ゴールまでとても長く感じられました。たくさんの方にサポートしていただき、無事にトップでチェッカーを受けることができ、さらにチャンピオンも獲得できて嬉しいです。サポートしていただいたたくさんの方に感謝しています。ありがとうございました。

小林龍太選手

 前回のレースで失敗したので、とにかく今回は一発タイムよりもレースのアベレージタイムを上げられるよう、他のライダーとは異なるタイヤチョイスをしました。予選もいいフィーリングで走ることができましたし、決勝も途中まではいい走りができていたのですが、複数台でのバトルになり、その中でタイヤを激しく使ってしまってレース終盤はつらい状況になってしまったのは誤算でした。それでもタイヤのマネージメントという部分では新しいアプローチができたし、いろいろ学べたレースとなりました。

浦本修充選手

 タイヤチョイスに悩んでしまい、それが最後まで尾を引いてしまいました。レースは一度130Rで飛び出してしまい、そこからペースを上げられず、順位を大きく上げられずに終わってしまいました。本当に悔しいです。

最終戦は雨のレースに

高橋巧選手

中上貴晶選手

小林龍太選手

浦本修充選手

J-GP2クラスチャンピオン